第九章
いよいよ世紀末。
大国が小さな隣国を侵略したうえで原発を爆破した。
隣国を中心円に放射能汚染地域は広がった。
大国のとっては、放射能の盾である。陸伝いで攻められることはない。
世界からは「まさかの暴挙」と非難されたが、
大国にとっては、何年も前からの計画のひとつにすぎない。
汚染物質は漂い、大気の流れに運ばれ広く拡散した。
時より降る雨は、黒く濁った水滴ですべてを覆い隠すようだ。
はじまりはいつも雨
黒い雨はよくある名前さえも消してしまいそうだ。
その雨の中 命がけの進軍が始まった。
激戦が続くかと思っていたが、
あっという間もないほどだった。
攻撃の始まりと同時に迎撃システムが稼働した。
迎撃が迎撃を・・・またその迎撃が・・もはや攻撃だろう。
誰にも止められない一瞬の出来事にすぎない。
もう誰も生きていけないだろう。
指先さえも動かせない。辛うじて動いている心臓が血液を送り出すたびに
全身が激痛に襲われる。血管の1本1本が破裂していく感覚だ。
薄くなった酸素を必死で吸い込もうとする肺が痛い。
喉も鼻も気管支も焼けつくような痛さを感じるが、ぴくりとも身体が動かない。
有毒ガスのせいだろう。間もなく完全停止 死ぬ。
一瞬であるが、長いはずの記憶がよみがえる。感傷するほどゆっくりと‥不思議。
痛さも消えて心地よい感覚。あたたかい陽射しの中をふわふわと浮いてる。
天国に昇っているのだろう・・・。
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