第13章

待ってましたとばかりに
パンを口にする者 ワインを飲む者
小麦の焼いた香りと芳醇なワインの香りに焦らされていたから
腹は鳴るしヨダレを抑えるのがやっとだった。
「うめえ こりゃうめえ」と皆が言った。


「どうだ 美味いだろう」とイエスが微笑んで言うと
返事すら声に出せずにうんうんと大きくうなずいた。


「私の肉と血は・・お前たちの家族の肉でもあり血でもあるからなあ。
 さぞかし美味しいことだろう。」


「げっ・・うえっーーぐあつ・・・げぼっ・・なんだこれは!」
皆が口にしていたパンとワインを吐き出した。
パンは生の肉片に、ワインはドロッとした生血になっていた。
その香りは生臭い死臭に近いものに変わっていた。


イエスは慌て驚き血の気が引いた青ざめた男たちを見て大声で笑い出した。
「あなたは・・・イエスさま?ではないのですか?」
ひとりの男が口の周りの血を手の甲で拭きながら恐る恐る訊いた。


「この顔に この声に この名前に偽りはない。イエス・キリストだ。
 お前の祈りに応えてきただろう。私が神だ。創造主である。」